1.高温による登熟歩合、千粒重および外観品質への影響が大きくなる時期はそれぞれ出穂後6〜10日、11〜15日および16〜20日であった。これらの時期の高温による品種間差異がもっとも大きくなる温度帯については十分なデータが得られず、来年度の継続課題となる。気温-籾温差には明瞭な品種間差異が認められ、高温環境にあっても発育中の穎花の受ける温度ストレスは品種によって異なることが示唆された。 2.各品種とも高温により出穂期から登熟中期までの葉鞘および稈中の非構造性炭水化物(NSC)の減少量が大きくなった一方で、登熟後半にはその再蓄積が顕著に認められた。これらのことから、高温下では登熟前半の穎花への同化産物供給量は不足であるが、登熟後半は穎花の炭水化物受け入れ能力が制限要因であることがわかった。 登熟初期の穎花の成長速度と登熟歩合の間に高い正の相関が認められた。また同時期の穎花への同化産物供給可能量と穎花の成長速度の間にも高い正の相関が認められた。これらのことから、登熟初期に同化産物供給の不足しがちな高温下では、穎花の初期成長が抑制されそのため炭水化物受け入れ能力が低下することが示唆された。 強勢穎花および弱勢穎花の水溶性全糖含量の推移を調査した結果、強勢穎花については高温の影響は認められなかったものの、弱勢穎花では糖含量がピークとなる時期が高温下で早まる傾向が認められた。糖含量がピークになる時期はでんぷん合成速度が高まる時期とほぼ一致することが知られていることから、高温下では弱勢穎花の登熟が早められ穎花間の同化産物競合が激化することが推察された。 以上のことから、高温下では登熟初期の同化産物の不足および穎花間の競合の激化によって穎花の初期成長が抑制されることにより、穎花の炭水化物受け入れ能力が低下し登熟歩合が低下することがわかった。
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