研究概要 |
コメタンパク質は、コメを主食とするアジア地域、特に発展途上国の人々にとって貴重なタンパク源であるにも関わらず、必須アミノ酸であるリジンが不足している。全種子タンパク質の80%を占める主要貯蔵タンパク質グルテリンは、2つのサブファミリー(Aタイプ,Bタイプ)から構成されるが、Bタイプの方がリジン含有率が最大40%程度高く、栄養性が優れている。本研究では、グルテリンのサブファミリーに特異的な抗体およびサブファミリーを代表する遺伝子のプロモーター領域にGUS遺伝子をつなげてイネに組み込んだ形質転換体を用いて、グルテリンの発現・蓄積過程をサブファミリーごとに解明する計画を立てた。 本年度は、まず、種々のクロマトグラフィーにより精製した抗グルテリン抗体を用いて、ウエスタンブロッティングを行い、特定のサブユニットに特異的な反応条件を見出した。そして、この条件下で、開花後3日目より2日おきに29日目までサンプリングしたコシヒカリ(japonica)およびタカナリ(indica)の種子タンパク質を分析し、両品種ごとに発現パターンの差異を明らかにした。次に、登熟中期の標準的な種子組織切片(japonica)を作製して、抗グロブリン抗体と蛍光色素ローダミン等を用いて最適な免疫反応条件を蛍光顕微鏡により検討した。次年度は、グルテリンのサブファミリーに特異的な抗体を用いて、組織観察を行う予定である。 一方、グルテリン遺伝子のプロモーター領域にGUS遺伝子をつなげてイネに組み込んだ形質転換体を、様々な培地組成のもとで穂培養し、試料を調製した。得られた試料より、グルテリン遺伝子発現の指標となるGUSタンパク質を抽出し、蛍光分光光度計を用いて定量的な分析を進めた。次年度も引き続きGUSタンパク質の分析を行う予定である。
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