1.長野県および岡山県から収集した雑草イネ系統について、雑草化に関わる重要形質である休眠性を調査した。出穂後100日目の発芽調査の結果、播種後30日以内に95%以上の種子が発芽する系統が最も多かった(Type1、全体の約75%)。これに対し、播種直後から発芽を開始するが、Type1よりも発芽が著しく遅延(最長で播種後約200日目に発芽終了)する系統(Type2、約18%)や、播種直後は発芽せず、一定期間を過ぎると徐々に発芽が進む系統(Type3、約7%)が存在した。雑草イネの発生地区ごとに比較すると、長野県・岡山県ともに、発生が著しい地区から採種される雑草イネは休眠が深い傾向にあった。 2.岡山県に発生した日本型雑草イネと栽培イネとの類縁性について、栽培イネ130品種が識別可能な15種類のSTSマーカー(新村ら2005)を用いて遺伝解析を行った。その結果、日本型雑草イネの約60%は、栽培品種「アケボノ」とバンドパターンが一致した。「アケボノ」は雑草イネが発生した圃場の約85%で栽培されていた品種であり、上記の日本型雑草イネの大半は「アケボノ」に形態的にも酷似していた(牛木2005)。さらに、品種「雄町」の栽培圃場から採取され「雄町」とよく似た形態をもつ雑草イネ系統は、「雄町」と同じバンドパターンを示した。以上のことから、岡山に発生する日本型雑草イネの多くは、発生した圃場における栽培品種と形態的に類似しているだけでなく、DNAレベルでも高い相同性を示すことが明らかとなった。
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