1.長野県に発生する雑草イネは、出穂後約2週間目から自然脱粒を開始し、脱粒した籾は帯緑籾であっても80%以上の高い発芽能力を有していた。また、脱粒した籾の約0.1%は休眠性(翌春に好適な条件下においても発芽しない能力)を有していた。長野県(須坂市)の圃場において、脱粒した籾の越冬能力を調査した結果、地表面においては15±13%、土壌中では43±33%の籾が翌春まで生存していた。特に、近年(2002年)採取された雑草イネの多くは1970年代に採取された雑草イネよりも越冬能力が高かった。休眠性(出穂後100日目の発芽率で評価)が強いほど、越冬能力が高くなる傾向にあったが、出芽開始時期、出芽最盛期、出芽継続期間等と休眠性との間には一定の関係が見られなかった。以上の結果から、雑草イネの手取りによる防除適期は出穂後2週間以内であり、籾が脱粒した場合には、秋起することなく地表面で越冬させることにより埋土種子化を抑制できることが示唆された。また、近年発生している雑草イネは越冬能力においても難防除化しており、このことが発生拡大の一因となっていることが示唆された。 2.岡山県に発生する雑草イネは、特定の栽培品種と生理形態的・遺伝的に極めて類似しているが、収穫期前にほとんどの籾が自然脱粒する特徴を持つことから、イネの脱粒性に関わる遺伝子がqSH1(Konishi et al.2006)およびsh4(Li et al.2006)について雑草イネと栽培品種との比較解析を行った。その結果、雑草イネとそれらに対応する栽培品種(朝日、アケボノ、雄町)は全てqSH1機能型、sh4非機能型であり、雑草イネと栽培品種の間に差異は見られなかった。以上の結果から、雑草イネの自然脱粒性はqSH1、sh4以外の遺伝領域によって制御されていることが示唆された。
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