本研究は、近年環境の悪化が指摘されて久しい日本の沿岸域の利用と保全の効果的管理手法について、情報の発信・サイン計画・環境教育といった情報提供の観点から検討することを目的としている。 平成16年度は、海岸利用者の管理に関して、早くから一定の成果をあげている米国のケープ・コッド国立海岸に着目し、特に情報提供という観点から、既存の資料、関係機関への聞き取り、現地での調査から、その管理の現状を把握することを目的とし、我が国への適用可能性について検討した。また、国内で利用と保全に関する管理が行われている事例について現地調査を行った。 調査の結果、ケープ・コッド国立海岸における現状の問題点として、(1)提供情報の統合、(2)サイン計画の見直し、(3)地域住民を巻き込んだ環境教育、があげられた。ケープ・コッド国立海岸はこれまでの米国の国立公園システムとは異なり、日本の国立公園同様、多くの私有地を公園内に含んでいることから、公園の維持管理には地域共同体との協力が不可欠である。しかしながら、来訪者への事前情報の提供を行うシステムが一元化されていないため、しばしば混乱を招き、サイン計画の不備ともあいまって私有地への侵入や地域コミュニティーとの軋轢が生じている。現在、地域コミュニティーと話し合いの場を設け、新たな公園管理の道を模索している。 また、今年度は利用者間のコンフリクトから利用区域を施設整備により区分した国内の事例として、大阪府二色浜海浜緑地での現地調査を行ったが、施設整備や情報提供による管理計画の有効性が確認できた。さらに、静岡県遠州灘でのアジサシやウミガメ等の海岸生態系保全への取り組みの現地調査から、環境保全活動や情報提供におけるNPOの役割ならびに地域ボランティアの重要性を確認できた。
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