本研究は、近年環境の悪化が指摘されて久しい日本の沿岸域の利用と保全の効果的管理手法について、情報の発信・サイン計画・環境教育といった情報提供の観点から検討することを目的としている。 平成18年度は、前年度までに得られた知見を参考に、海岸利用者への効果的な情報提供の手法を検討することを目的として、「インタープリテーション」に着目してその効果について調査・検討した。調査対象地は前年に引き続き、大都市近郊に位置しながら、自然の砂浜、砂丘、天然のカシワ林が一体となってと残されているものの、近年の利用による環境悪化や利用者間の軋礫などが深刻な問題となっている北海道石狩海岸とした。調査は、8月中旬に石狩海岸の利用者72名を対象としたアンケート調査を行い、インタープリテーションの効果を把握するため、石狩海岸の現状を解説したグループと解説しなかったグループ間で、現状の問題認識や将来の管理方法についての回答の傾向の違いを比較・検討した。 その結果、石狩海岸の環境問題の現状について解説の有無による回答傾向の違いがみられ、解説をしたグループでは保全的管理や環境に配慮した利用を比較的望む傾向がみられた。この結果は、インタープリターを通した利用者への情報提供が、利用者の意識改善に対して一定の効果を有し、石狩海岸のような一般公共海岸の管理に有効なツールとなり得ることを示している。
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