都市化が緑地土壌の生物的・化学的性質に及ぼす影響を明らかにする目的で、上流部から下流部にかけて都市化が進行する多摩川周辺のクヌギ・コナラを主とする森林型緑地を大量に、土壌の化学的・生物的な性質を調査した。本年度は、昨年度に明らかにした都市化に伴う土壌有機物含有量の増加の原因解明を主な研究対象とした。 都市化に伴い、土壌の酸が中和され、一般細菌数と放線菌数が増加し、無機態窒素生成速度も増加した。糸状菌数と微生物活性には都市化の影響は見られなかった。都市化に伴い、土壌中のリグニン量が増加し、落葉に含まれるマンガン量が減少した。また、既往の報告より、都市化に伴い、降雨にとけ込んで生態系に供給される無機態窒素量は増加すると考えられた。 これらの結果から、都市化に伴う土壌有機物量の変化のしくみが以下のように考えられた。 都市化に伴うアルカリ性粉塵の影響で、土壌の酸が中和されると、土壌中の可給態マンガンが不可給化し、植物に利用されにくくなる。マンガンがリグニン分解酵素の材料であることから、植物によるマンガン吸収量の減少とそれに伴う落葉中のマンガン濃度の減少は有機物(落葉)中のリグニン分解を不活発にさせる。一方、無機態窒素の増加もリグニン分解を阻害することから、土壌の酸の中和による無機態窒素生成速度の増加と降雨による無機態窒素供給量の増加は、リグニン分解の阻害と土壌への蓄積をもたらした。これらのことから、都市化に伴う土壌へのリグニンの蓄積が土壌有機物の増加をもたらしたと考えられた。
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