研究概要 |
岩手県滝沢村一本木上郷地区,一本木東北開拓,一本木大川開拓,玉山村下田地区の戦後開拓により造られた比較的新しいカラマツ・アカマツ防風林を中心に(一部丘陵上の森林も含む),植物社会学的植生調査を行った。期間は2004年8月から10月にかけてである。その結果61箇所の植生調査資料を得た。前年度の2003年度は家畜改良センター岩手牧場や岩手県農業研究センター畜産研究所などの施設周辺にみられる古くからの防風林51箇所について調査しており,2003年度・2004年度合わせた上での防風林の植生タイプ区分を行った。現地調査の結果,エンレイソウ,シュンラン,ササバギンランなどは古いくから存続している防風林では分布が確認されるものの,新しい防風林では確認されなかった。来年度には調査地近傍の孤立丘陵地においても植生調査を行うことによって,地形や孤立の度合いなどの他の環境要因と合わせて考察する予定である。 また防風林の歴史的背景を知るために明治時代の岩手県統計書や岩手県管轄地誌,滝沢村誌などの文献を利用し,防風林の履歴を調査した。調査の結果,国道4・282号沿いの防風林は江戸時代から整備されたものであること,研究機関周辺の防風林は施設整備に伴い造成されたこと,戦後の開拓地は,開拓以前は所々にアカマツの混じる草地で採草地や放牧地として利用されており,開拓に合わせて防風林も構築されたことがわかった。文献調査の結果はまとめて「環境フォーラム」(岩手県立大学総合政策学部環境政策講座紀要)に掲載する予定である。
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