研究概要 |
今年度までの成果は大きく以下の二点に整理される。 1.防風林の植生調査 岩手県盛岡市・滝沢村を中心とした岩手山東麓のアカマツ・カラマツ防風林について2004,2005年度に植生調査を行い,80余の調査資料を得た。2003年度にも50余の調査資料が得られており,概ねこの地域をまんべんなく調査することができた。この結果,エンレイソウ,シュンラン,ササバギンランなどは古くから存続している防風林では分布が確認されるものの,新しい防風林では確認されなかった。来年度には土地利用や土壌,地質,地形などの各環境要因と植生タイプとの間の関係について解析を行う予定である。その上で多変量解析を用いて,植生-環境モデルを作成する。 2.過去の相観植生図の作成およびGIS(地理情報システム)化 1:25,000地形図大更・鷹高・姥屋敷・渋民各図幅の地域について,過去の地形図(大正元年,昭和14年,昭和44年,昭和58年)を利用して,相観植生図を作成し,これらをGISに入力した。また空中写真や各種地図も取り込み,重ね合わせできるように整備した。作成したものを比較することで対象地域の土地利用履歴の変遷を捉えることができた。岩手山麓では戦前は草地が多くみられたが,戦後は開拓事業が行われ牧草地へと変化し,その周囲に防風林が植栽された。一方,家畜改良センター岩手牧場を始めとする研究機関の周囲の防風林は大正元年地形図からも確認でき,当時から存続している土地利用であることが理解できた。これら結果の一部を「総合政策」誌および「環境フォーラム」誌に掲載した。
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