調査対象とした集合住宅団地の周辺市街地において、建設後約30年が経過した戸建住宅地の緑被率調査では、1戸当たりの宅地規模が平均200m^2の戸建住宅地では、最低値が10%強、平均280m^2では15%強、330m^2でも20%強であった。一方、建設後約30年が経過した集合住宅団地の緑被率調査では、40%以上となる団地が多いことが明らかとなった。また、居住者に対するヒアリング調査では、調査対象団地の緑環境に対して緑の豊かさ、四季の変化、夏季の涼しさ、小さな生き物とのふれあいといった点で一定の評価が得られており、戸建住宅が連担する市街地において大規模集合住宅団地は、緑量とともに大きく豊かに成長した樹木の樹冠が覆う快適な屋外空間の提供といったある一定の公益的機能を発揮しているものと考えられる。 建設後約30年が経過し、保存樹木や移植樹木を有する建替集合住宅団地の居住者を対象に、建替前後の団地の屋外空間の中での好きな場所や樹木に関してヒアリング調査(サインマップ法)を実施し、団地の屋外空間に対する居住者の接触行動を探った。その結果、建替前から多く存在し、団地のイメージを規定する樹木、樹形が特徴的な大径木、さらにこれらが存在する場所は、建替前から居住者に好まれており、こうした居住者が好む樹木を建替後に現地保存することで感覚や視覚のみならず建替前の情景を懐かしむといった記憶の継承も達成されやすいことが明らかとなった。加えて、居住者に好まれている保存樹木と同種の移植樹木や新規樹木も居住者に好まれやすいことが明らかとなった。 今後の緑環境を基調とした団地再生において建替前の緑環境に対する居住者の意識調査の重要性が指摘できるとともに、樹木の現地保存のみならず、保存樹木のイメージを継承しながら移植樹木や新規樹木を選定することが重要であると考えられる。
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