1.マイクロハビタットとしての畦畔:扇状地水田域(岩手県)においてトウキョウダルマガエルの利用密度等を調査し、素堀水路脇の畦畔に強い選好性を持つとともに、コンクリート水路への置換による負の影響が示された。水田に挟まれる畦畔では、湛水域内の水域近接地として畦畔の重要性が示された。本種の畦畔利用の規定要因は、畦畔の形態面が主、管理面が従となっていた。 2.集居集落の生態的機能:平野水田(新潟県)のカエル類の分布状況から集居集落の生息パッチとしての生態的機能を考察し、ニホンアカガエルとシュレーゲルアオガエルの生息に必要なまとまりのある草原・樹林環境を集居集落は提供してきたものと推察された。 3.棚田の管理形態と両生類相:山腹の石積み棚田景観域(大分県)における管理形態と両生類相の関係を調査した。耕作管理される棚田では多様なカエル相の存在が明らかになり、その際、山側にある素堀の溝が、その両生類相を維持する上で重要な景観構成要素と考えられた。耕作放棄されるとニホンアマガエル、ツチガエル、ヌマガエルの生息は激減したが、過湿となる凹地の粗放管理地では湿生草原が長期間維持され、比較的多様な両生類相が形成されていた。 4.水辺の生き物像と計画指標:水辺遊びの生き物体験を実態把握し、現代の児童が抱く"水辺の生き物像"を考察した。農村・都市部を問わず"水田にカエル"が最も現代的な水辺での生き物体験の内実であった。これらは、児童らが水辺での接触体験(目視・捕獲等)を期待する生物種であり、計画指標種としてその生息空間の確保が水辺環境の整備・復元において重要と考えられた。 5.小流域での生息適地評価:丘陵地域(神奈川県)のビオトープ地図を用い、小流域単位でカエル類の生息適地評価を行った。繁殖期と非繁殖期に必要なビオトープタイプの組み合わせより、45〜63%の的中率で評価可能であり、緑地計画への応用が可能となった。
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