花きに対する知覚過程を分析し、アメニティ効果をもたらす花きの感覚的特徴を、特に視覚に注目して分析を行った。複数の手法を用いて花きのイメージ構造を分析したところ、花きの視覚的特徴はさまざまな評価要素が複合しているが、最終的には色彩、形状、相互作用の3点に集約された。本年度はこれらの要素のうち、花色が心理状態および脳機能に与える効果について実験を行った。赤、紫、白、黄と花をつみ取ったもの(緑)の5色のポット苗を被験者に提示し、主観評価、感情状態、脳波、脳血流量、唾液中コルチゾール濃度を測定した。その結果、白、黄の明るい色と赤、紫の暗い色では被験者の反応が異なった。明るい色は暗い色よりも好ましく評価され、感情状態がポジティブに、脳活動が沈静化、身体的ストレスが低減していた。 そのほか、花きや緑化植物によって引き起こされる生理・心理的応答から、アメニティ効果の実体解明を行った。夏期の日陰を対象に、日射遮蔽物が人工物(塩ビ板)と植物の場合でアメニティ効果にどのような差異があるのかを検討した。植物による緑陰は人工物による日陰に比べて、快適感が高いと評価されるだけではなく、脳波のα波発生量が多く、血圧も低下させていた。また、屋外レクリエーション地の景観に花きが有る場合と無い場合とでアメニティ効果を比較したところ、景観内に花きが存在することで空間の華やかさが強調され、活気・疲労感を感じるとともに、前頭部の脳活動が活発となり、心拍数が増加していた。 さらに、花きに対する知覚・認知過程を検討する段階で、認知症や高度脳機能に傷害をもつ方の花き類に対する反応を観察した。これらの被験者では一般健常者に比べて触覚の割合が多く、感覚的特徴のユニークさ、植物の成長や収穫がアメニティとして認知されていた。また、このような園芸植物を用いたリハビリテーションの特徴と、園芸療法の設計・運営の特性についてとりまとめた。
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