カンキツグリーニング病は罹病樹を数年で枯死させるカンキツの重要病害であり、我が国でも早急な防除対策の強化が課題となっている。病原細菌・Candidatus Liberibacter asiaticusは難培養性であり、DNA解析を通して生物学的性状の解明に取り組むことが有用である。そこで本課題では実験条件の把握と基礎的知見の蓄積に取り組むため、本年度はニチニチソウの接木感染系を利用して、ニチニチソウの罹病成葉から病原細菌を多く含む画分を効率的に精製し濃縮画分を精製した。 病原細菌Kin-1株に罹病したラフレモン樹より、ネナシカズラ伝搬によって罹病ニチニチソウを作出し、さらに接木接種によって罹病ニチニチソウを増殖・育成した。病徴が発現したニチニチソウから罹病葉を採取し、その主脈を切り出して材料とした。まずニチニチソウ主脈を切り出し、MacerozymeおよびCellulaseで37℃、1晩処理し、0.3Mマンニトールを含む緩衝液中でホモジェナイザーにより破砕した。その後、低速ならびに高速遠心分離を繰り返したのちに各画分を採取、一部の精製画分についてはショ糖密度勾配超遠心分離法により再精製した。その後CTAB法により各画分のDNAを抽出し、Cand. L.asiaticusの16SrDNA領域のPCR検定を行った。最終的な精製画分を、30%-40%-60%のショ糖水溶液に重層して超遠心分離を行い、30%-40%の界面画分と40%-60%の界面画分よりそれぞれDNAを精製してPCR検定を行ったところ、両画分中に病原細菌の存在が確認された。さらに鋳型DNAを段階希釈して分画を全く行わなかった全DNAと病原細菌の検出感度を簡易的に調べた結果、上記の分画によって病原細菌が100〜1000倍濃縮されていることが示唆された。
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