研究課題
Cry1Aaはカイコ(春嶺x鐘月)に強い殺虫活性を示すが、Cry1Acは全く活性を示さない。Cry1AaとCry1Acは非常に類似した構造を持ち、共に標的組織であるカイコ中腸刷子縁膜に結合する。Cry1Acがカイコに殺虫活性を示さない原因を解析した結果、Cry1Acが糖タンパク質のGalNAcを含む糖鎖を介して、囲食膜にトラップされているごとが明らかになった(Hayakawa et al., 2004)。この結果は昆虫囲食膜によってCry1Acの殺虫活性が阻害されている可能性を示唆していた。囲食膜を破壊することでCry1Acの殺虫スペクトルを拡大できるか解析するため、囲食膜のキチン繊維を分解するキチナーゼと囲食膜の主要構成糖タンパク質(ムチン様タンパク質、IIM)を分解するウイルスプロテアーゼ(エンハンシン)を大腸菌で発現させた。キチナーゼA遺伝子とエンハンシン遺伝子はPCR法により増幅した。鋳型にはカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)T3株とシロイチモジヨトウ顆粒病ウイルス(XcGV)から抽出したゲノムDNAを用いた。クローニングの結果、BmNPV由来のキチナーゼA遺伝子とXcGV由来のキチナーゼA遺伝子、エンハンシン2、エンハンシン3遺伝子を得た。これら遺伝子を発現ベクターpGEX-6P-1に挿入し、GSTとの融合タンパク質として発現させた。その結果、目的の大きさを持つGST融合タンパク質が観察されたが、ほとんどが不溶化して活性を失っていた。僅かに発現したキチナーゼAの可溶性キチンに対する分解活性を解析した結果、僅かながら活性が観察された。一方、エンハンシンのプロテアーゼ活性を測定した結果、エンハンシン3の活性は検出されたが、エンハンシン2の活性は検出されなかった。現在、この問題を解決するために発現条件の検討及び昆虫細胞を用いた発現系の構築を進めている。
すべて 2005
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Biotechnology of Bacillus thuringiensis, (Ngo Dinh Binh, Ray J.Akhurst, Donald H.Dean eds)(Science and Technics Publishing House) Vol.5
ページ: 163-176