前年度の結果を踏まえ、今年度は沖縄島に棲息するイエシロアリを用いて、主要なヘミセルロース分解酵素のひとつであるキシラナーゼの精製を試みた。イエシロアリを凍結乾燥し、乳鉢により粉末にした。これを酢酸ナトリウムバッファーに懸濁し、遠心分離とフィルター濾過によって不純物を取り除いた。これを脱塩カラムにかけた後、イオン交換クロマトグラフィーならびにゲル濾過クロマトグラフィーによってキシラナーゼの部分精製を行った。その結果、イエシロアリのキシラナーゼは76.8倍に精製され、比活性は146units/mg proteinとなった。また、部分精製されたキシラナーゼの分子量をSDS-PAGEと活性染色を組み合わせて調べたところ、約146kDaおよび97kDaであると推定された。キシラナーゼ活性は、pH5.8で最大活性を示し、pH7.0以降は急激な減少を示した。また、温度に対して、30-55℃の間で少なくとも30分間は安定に活性を保持した。また、キシランに対するKm値は1.0mg/mlであり、既知のキシラナーゼと比べても低い値であったことから、今回部分精製されたキシラナーゼがキシランに対して比較的高い親和性を持っていることが考えられた。また、今回得られたキシラナーゼの由来を調べるために、イエシロアリの中腸抽出物ならびに後腸抽出物をゲルろ過し、今回部分精製されたキシラナーゼの溶出ピークと比較した。しかしながら、いずれもほぼ近接した位置にピークが認められたため、キシラナーゼの由来を特定するにはいたらなかった。次年度は、この部分精製されたキシラナーゼについて、さらに遺伝子を単離解析し、発現部位の特定を進める予定である。
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