カイコ絹糸腺で外来遺伝子を発現させるために必要なプロモーターの開発・改良を効率よく行うために、カイコ絹糸腺にプラスミドDNAを導入し一過性に発現をみるシステムの開発を行った。 まず、カイコの絹糸腺で特異的に発現するフィブロインH鎖、フィブロインL鎖タンパク質遺伝子のプロモーター領域を増幅してプラスミドベクターpGL3-basicに導入し、これらのプロモーターの制御下でホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するレポータープラスミドの構築を行った。用いた領域は、それぞれ遺伝子ORFの上流約1kbpおよび0.6kbpである。 次に、これら2種のレポータープラスミドと、BmNPV由来の遺伝子プロモーターを改変した改変ie1プロモーターを用いたレポータープラスミドとをそれぞれカイコ幼虫にリポフェクション法を用いて導入し、レポータータンパク質の発現量を測定した。その結果、フィブロインL鎖プロモーターおよび改変ie1プロモーターでは調査したすべての組織(脂肪体、血リンパ、気管、中腸、マルピーギ管、中部絹糸腺、後部絹糸腺)で発現が認められたが、フィブロインH鎖プロモーターでは、いずれの組織においてもレポーターの発現ほとんど認められなかった。また、改変ie1プロモーターと比較してフィブロインL鎖プロモーターでは後部絹糸腺での発現量が他組織より比較的高く、フィブロインL鎖プロモーターの後部絹糸腺特異的な発現制御機構が一過性発現系においても再現されていることが示唆された。 一方で、後部絹糸腺において改変ie1プロモーターから発現したレポータータンパク質の活性はフィブロインL鎖プロモーター活性の約7倍あったことから、フィブロインL鎖プロモーターに改良を加えることで後部絹糸腺における発現量を向上させたプロモーターの構築が可能であり、より効率のよい外来遺伝子導入ベクターの開発が可能であることが示唆された。
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