本年度は、1カイコ絹糸腺におけるレポーターアッセイのための内部標準系の開発、および、2高い発現特性を持つ新規プラスミドベクターの開発、を目標として研究を行った。 1、については、βガラクトシダーゼ、およびレニラ・ルシフェラーゼ発現ベクターを構築し、これらをレポーター活性検定の内部標準に用いるための条件検討を行ったが、これらのレポータータンパク質の活性と交差反応を起こす成分がカイコ組織に含まれており、内部標準としての利用は困難であった。 2、については、フィブロインH鎖遺伝子に注目して研究を行った。まず、レポータータンパク質が絹タンパク質の一部として発現するように、フィブロインH鎖遺伝子の一部にEGFPを融合させたタンパク質遺伝子を構築した。本レポーター遺伝子を用いてフィブロインH鎖遺伝子プロモーターの活性を測定したところ、フィブロインH鎖プロモーターからの発現には、イントロン領域の利用が効果的であるという知見を得た。そこで、新たな発現ベクターとしてフィブロインH鎖遺伝子プロモーターとイントロン領域(約2kbp)を重複して持つ新規発現ベクターを構築した。本ベクターを一過性にカイコ絹糸腺に導入し24時間後のmRNA転写量を指標に発現量を解析したところ、プロモーターとイントロンを単独で持つベクターではmRNAが検出されなかったものの新規ベクターではmRNA発現が確認され、今回作製した新規発現ベクターがより高い転写活性を持つことが推測された。 現在は、新規に構築したベクターを用いて実際にトランスジェニック・カイコの作製を進めており、本研究課題で開発した一過性発現系での結果と、トランスジェニック・カイコでの結果との比較研究を進めている。
|