R1BmはカイコrRNA遺伝子配列に部位特異的に挿入することが確認されているnon-LTR型レトロトランスポゾンである.R1Bmがもつ2つのORFのうちORF2には、human AP endonuclease 1(hAP1)に相同なドメインをもつタンパク質がコードされており、その中の42アミノ酸残基が特定のDNA配列認識に必須であると考えられている.R1Bmタンパク質がどのように標的配列を認識するのかを、計算化学的手法を利用して解明することを目的に、一昨年度クラスターPCを導入し、大規模シミュレーションが行えるようシステムを構築・調整を行った. 昨年度本システムを用い、タンパク質データベースからダウンロードしたhAP1のendonucleaseと相同なドメインを持つタンパク質の結晶構造データと、R1Bmの標的配列を含むDNA分子とを組み合わせたシミュレーションの系を設計し、MD計算用ソフトウエアAmber7を用いてMDシミュレーションを行った.現在、計算を実行中である.このシミュレーション結果から、タンパク質・DNA両分子間の相互作用の中心となる部位の候補が選定され、その候補部位のアミノ酸を置換した配列を用いてR1Bmの宿主ゲノムへの挿入の有無を確認することで、シミュレーションによる計算結果の妥当性を評価可能であると考えている.
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