研究概要 |
本研究では,蒸気消毒や各種薬剤消毒と,消毒後の土壌への有機質資材の施用が,微生物群集へ及ぼす影響を明らかにし,消毒後の適切な土壌管理法を提言すること目的とする.本年度は,各種消毒法による土壌中の微生物群集及び窒素動態への影響を評価することを目的に,室内実験系による試験(ポット試験)を実施した.高さ30cm,直径10cmの塩ビ製パイプに土壌を充填し,蒸気消毒,クロルピクリン剤消毒及び、臭化メチル剤消毒を施した.土壌試料を経時的に採取し,窒素の動態(硝化菌数,微生物バイオマス窒素,無機態窒素量,培養法による窒素無機化曲線)を調べ,バイオログ法及びリン脂質脂肪酸法により微生物群集への影響を評価した.試験は2回行い,消毒後にメロンを栽培した. いずれの消毒処理でも,消毒直後の土壌では,NH_4-Nが蓄積し,また,微生物バイオマス,硝化菌数,微生物群集の基質資化活性は減少した.これら各項目の変化は,蒸気消毒区>クロルピクリン剤消毒区>臭化メチル剤消毒区の順であった.したがって,消毒時に最も影響が大きいのは,蒸気消毒処理であると考えられた.一方,消毒後の推移では,クロルピクリン剤処理,臭化メチル剤消毒処理の方が,蒸気消毒処理より,無機態窒素量と微生物群集の基質資化活性への影響が長期にわたり継続した.また,試験終了時の微生物群集構造は,蒸気消毒区は対照区と差がないが,薬剤区では異なる群集が発達していることが推察された.以上のように,土壌微生物群集と窒素の同定へ及ぼす影響は,消毒処理ごとに異なることが明らかとなった.なお,リン脂質脂肪酸法の測定結果については現在解析中である.
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