研究概要 |
本研究では,各種土壌消毒方法の違いが,土壌中の窒素の形態と微生物群集へ及ぼす影響を明らかにすることを目的に,ポット試験を行った.臭化メチル剤(MB)とクロルピクリン剤消毒(CP),蒸気消毒(SS)を施した土壌を,それぞれPVCポット(28cm長,11cm径)に詰め,消毒6日後にメロンを定植した.土壌試料を経時的に採取し,無機態N量,微生物バイオマスN(MBN)及び,微生物群集への影響(Biolog法,PLFA法)について評価した.消毒処理によりCP区とSS区では,MBNは減少し,NH_4-N量は増加した.両区におけるMBNの減少量は,NH_4-Nの増加量とほぼ一致した.一方,MB区では,NH_4-N量はCP, SS区と同程度まで増加したが,MBNの減少は小さかった.Biolog法によるAWCD値は,消毒によりCP区>MB区>SS区の順となったが,消毒19日目には対照区とほぼ同程度にまで回復した.全PLFA量は,いずれの処理区でも消毒により減少した.MB区では,多価不飽和脂肪酸(主に18:2ω6c)の減少が顕著であり,糸状菌が強く影響を受けていると推察された.CP, SS処理のPLFAへの影響は,MB処理に比べ非特異的であり,どのPLFAも一様に減少した.消毒19日目には,NB区のPLFA量は対照区と同程度にまで増加したが,CP区とSS区では低かった.以上の結果から,SS, CP処理は,土壌微生物群集への影響が大きく,特にSS処理では影響が長期間残ることが明らかとなった.また,増加したNH_4-Nの主要な給源は死菌体であると推察された.一方,MB処理でも,微生物群集は,強く影響を受けるが,SSやCP処理に比べ,速やかに回復すると考えられた.MBNの減少量とNH_4-Nの増加量が一致しなかったのは,微生物群集の速やかな回復が一因であると推察された.
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