PCB分解菌Rhodococcus sp.RHA1のビフェニル(BP)分解遺伝子群のうち、その転写制御機構が明らかとなっていない下流遺伝子群bphGF1E1の転写制御機構について解析をおこなった。まず、bphGのプロモーター領域をレポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結し、RHA1株に導入した。BP存在・非存在下でルシフェラーゼ活性を経時的に測定した結果、各プロモーター活性は約3倍に上昇した。この転写活性の上昇が上流遺伝子群の転写を担うBphSTタンパクに依存しているかを調べるために、異種宿主であるRhodococcus erythropolis IAM1399中でレポータープラスミドとBphSTを共存させ、BP存在下でルシフェラーゼ活性を測定したが、転写活性の上昇は観察されなかった。このことからbphGF1E1の転写調節はBphSTとは異なるタンパク質によって担われていることが強く示唆された。 次にbphGF1E1の上流に存在し、転写制御因子と相同性を示すbphRのRHA1中での転写量を上述のbphGと同じ方法で観察した。その結果、bphRの転写量もBP存在下で約3倍に増大した。またその活性はbphGプロモーターの約5倍であった。BphRのbphG転写への関与を調べるために、bphRを含むbphG上流領域をレポーター遺伝子の上流に挿入したプラスミドと、同じプラスミド中のbphRの一部を欠失させたプラスミドを構築した後それぞれをIAM1399株に導入し、ルシフェラーゼ活性を調べた。その結果、bphR破壊プラスミドを持つ株ではルシフェラーゼ活性が約10倍に上昇した。このことから、bphRがbphGF1E1の転写制御に関与していることが示唆された。さらに、bphRを構成的プロモーターの下流に挿入した相補用プラスミドを各株に導入し、転写の増大が相補されるか調べた結果、予想に反して転写活性は押さえられず、逆に約6倍増大した。以上より異種宿主を用いた解析ではBphRの機能を特定することは困難であると考え、RHA1株中でのbphRの働きを調べるため、相同的組換えを用いたbphRの破壊を試み、bphR破壊株RDR2を得ることに成功した。
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