研究概要 |
(1)バイオアノード 微生物機能を有効に活用し,かつ電極反応と共役させ,基質の速やかな電気化学的酸化反応を実現することを目的としている.実際,微生物菌体そのままで電極触媒として用いると,反応系が非常に複雑であるために,律速段階が不明確となる.例えば大腸菌にて難酸化性物質である酢酸の生物電気化学的酸化反応が実現できたが,菌体内反応は解析が非常に困難でありブラックボックスとなってしまう.そこで今年度では微生物の代謝系触媒としての主な反応経路と見られるクエン酸回路に注目し,その反応解析を反応回路を構成する精製された酵素・コファクターをin vitroで再構成し,熱力学および酵素反応速度論的観点から詳細に渡って検討した.また,微生物(カビ)由来のグルコースデヒドロゲナーゼについて,バイオ電池への応用を目指し,反応速度解析を行った.非常に高い安定性,基質選択性,および活性を示し,センシング機能を有するバイオ電池への応用の可能性が高まった. (2)バイオカソード 前年度までの研究により微生物由来のマルチ銅酵素がバイオカソードに非常に適していることがわかり,Myrothecium verrucaria由来のビリルビンオキシダーゼについて詳細な反応解析を行ってきたが,本年度においては,さらにTrametes属のラッカーゼについても,バイオカソードへの応用を意識した特性評価を行った.具体的には,酵素の活性中心の酸化還元電位測定(無隔膜バルク電解法),酵素反応速度解析,pH依存性,電子供与体の選択性,直接電子移動挙動およびそのpH依存性について調べ,ビリルビンオキシダーゼとの比較を行った.それぞれの酵素の活性特性を踏まえ,多様な電池への対応ができ,その出力の向上が期待できる.また,今後さらに多くの種類のマルチ銅酵素についても検討を広げ,酵素活性を規定する因子,酵素反応メカニズムに焦点をあてて研究を進めていきたい.
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