研究概要 |
本研究は糖尿病臨床診断に有用な糸状菌由来の酵素、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)の生理学的意義を解明することを目的とし、(1)麹菌(Aspergillus oryzae)に見いだされた11種類のFAODホモログ遺伝子の解析、(2)他の生物由来(植物など)のフルクトシルアミノ酸代謝関連酵素の検索、の2つを課題とした。本年度は主に上記(1)について検討し、以下のような結果を得た。 (1)麹菌のFAODホモログ遺伝子の解析 麹菌の11種類のFAODホモログ遺伝子(FAO1〜FAO11)のcDNAをRT-PCRにより増幅し、大腸菌を用いた発現系を構築した。そのうち、4つのホモログについてはその酵素活性を検出することができ、Fao1はピペコリン酸オキシダーゼ、Fao2はサルコシンオキシダーゼ、Fao5は特異性の高いサルコシンオキシダーゼ、およびFao9がFAODであることを明らかにした。また、麹菌は2種のFAODアイソザイムを持つが、一次構造上からFao4がもう一つのFAODアイソザイムであることを予想した。さらに、FAO9遺伝子の破壊株の取得に成功し、破壊株の表現系から本遺伝子は麹菌がフルクトシルバリンを単一の炭素源および窒素源として生育する際に必須であることを明らかにした。 (2)分裂酵母のFAODホモログ遺伝子の解析 分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)も2種のFAODホモログ遺伝子(FAP1,FAP2)を持つことがゲノムプロジェクトで明らかになったので、大腸菌の発現系を利用し、両遺伝子産物の解析を行った。その結果、いずれもFAOD活性は検出できなかったが、それぞれピペコリン酸オキシダーゼおよびサッカロピンオキシダーゼであることを明らかにした。 以上(1)(2)の結果から、これまでFAODホモログと予想されている種々の生物由来のタンパク質について、その一次構造上からその機能を類推することができるようになった。
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