研究概要 |
ドコサヘキサエン酸(DHA)生産性海洋真核微生物であるラビリンチュラ類の新規単離株は,アスタキサンチンなどの抗酸化性カロテノイドも顕著量蓄積することから,機能性脂質の工業生産株あるいは飼料用途として有望である。本微生物群のDHA生合成経路は他の真核生物のそれとは異なり,脂肪酸合成酵素やポリケタイド生合成酵素と相同的な幾つかの酵素が関与する新規経路として注目されている。しかし,生化学的あるいは遺伝学的に完全には実証されておらず,利用法の開発は進んでいない。本研究では,同経路に関わる酵素群の完全同定による全容解明とその利用法の確立をめざしている。本年度は,関与が推定される各酵素遺伝子を破壊あるいは改変することにより機能解析を行う手段を整備するため,ラビリンチュラ類において未開発であった形質転換系を構築した。すなわち,単離株が感受性を示す薬剤を探索,検討した上で,耐性遺伝子を含むベクターを構築し,これをエレクトロポレーション法でラビリンチュラ細胞に導入したところ,薬剤耐性が数百倍向上した形質転換株が再現良く得られた。導入した遺伝子は染色体DNAとの相同組換えによって安定に保持されており,選択圧をかけない状態で継代培養を行っても欠落することはなかった。このことは,遺伝子破壊系が確立されたことをも意味しており,今後,これを利用した遺伝学的手法にもとづいて各種解析を行い,新規経路の全容解明とその利用法の確立をめざす。
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