白色腐朽菌Phanerochaete chrysosporiumはリグニンやダイオキシンなどの難分解性有機物質を二次代謝的に分解する事が可能である。分解系発現にはcAMPシグナリングの関与が示唆されてるが、詳細については未解明である。本研究はcAMPシグナリング関連遺伝子を特定し、その性質や他の遺伝子との関わりを解析する事を主な目的としている。平成16年度は、これまでに引き続き、培養前期、培養後期、cAMP合成酵素阻害剤アトロピン添加条件における菌体のmRNAを調製し、SAGE(Serial Analysis of Gene expression)法を利用した網羅的解析を行った。ところが、培養後期などの一部条件に置いて良好なtagが生産されていないことが判明し、それら条件におけるSAGE法解析結果が疑わしい事が判明した。原因を追及した結果、培養条件によっては、菌体が多糖と思われる成分を過剰に生産し、RNA抽出効率やcDNA合成効率を下げている事が判明した。RT-PCR等の操作には問題ないレベルであったが、SAGE法のような各操作の効率が十分でないと、得られる結果にバイアスが生じる可能性がある実験法では問題になったと考えられる。全RNAを陰イオン交換カラムで精製する事により、高純度RNAを精製した。精製されたRNAを用い散る事で、SAGEにおけるtagが良好に生産されるようになった。現在、SAGE法におけるデータ収集を引き続き行っているところである。
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