研究概要 |
アミノ酸飢餓応答機構は、酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて詳細に研究され、応答機構の中心的役割を担う転写活性化因子GCN4はGCN2を介して翻訳レベルで制御されている。現在まで、C.maltosa GCN2ホモログのC-GCN2の遺伝子破壊株の表現型から、S.cerevisiaeと同様にアミノ酸飢餓に応答してC-GCN4遺伝子はC-GCN2依存的、CYH添加後はC-GCN2非依存的に制御されていると考えられていた。そこでCYH添加、3-AT添加によるアミノ酸飢餓におけるC-GCN4遺伝子の制御をノーザン解析、レポーターアッセイにより解析した結果、CYH添加後のC-GCN2遺伝子破壊株におけるC-GCN4,C-HIS5,L41-Q遺伝子の転写の誘導レベルは野生株と変わらなかったことに比べ、3-AT添加後のC-GCN2遺伝子破壊株におけるC-GCN4,C-HIS5,L41-Q遺伝子の転写の誘導レベルは野生株に比べ減少していた。C-GCN4遺伝子は翻訳レベルにおいてもその発現が制御されているためレポーター遺伝子を用いて解析を行った結果、C-GCN2,遺伝子破壊株においてのみ3-AT添加後のC-GCN4遺伝子の翻訳レベルの上昇が見られなかった。また、翻訳制御に関与しているuORFに点変異を導入した変異型C-GCN4を作製し、C-GCN4遺伝子破壊株に導入後、それぞれのストレス下における生育を見た結果、CYH耐性化に要する時間は変異型、野生型共に変わらなかったが、アミノ酸飢餓条件下において変異型は生育が悪くなった。すなわちこれは、uORFはアミノ酸飢餓ストレスに応答し、適応するために必要であるが、CYH耐性化機構には関与していないことを示す。さらに転写阻害剤を用いた解析から、CYH添加後C-GCN4 mRNA安定性の増加により、C-GCN4 mRNA量は一時的に増加していることが明らかになった。以上のことから、CYH誘導的耐性化とアミノ酸飢餓応答機構は共にC-GCN4依存的であるが、その上流は別々の経路が働いていること示され、CYH誘導的耐性化機構へのmRNA安定性機構の関与が強まった。今後はuORFを持つ遺伝子のmRNAの安定性に関与すると考えられているNMD(nonsense-mediated mRNA decay)とCYH誘導的耐性化機構の関係について分子生物学的解析を進める。
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