酵母Candida maltosaは蛋白質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CYH)に対して、生育が一時停止した後に再び生育が回復する誘導的耐性を示す。これは、CYH添加後、転写活性化因子C-Gcn4pが、CYH耐性L41リボソーム蛋白質遺伝子(L41-Q)の転写を誘導し、CYH耐性型リボソームが合成されることに起因する。 本年度、転写活性化因子C-Gcn4pの活性を制御する候補因子C-CPC2遺伝子とC-GCN4 mRNAの安定性を制御する候補因子C-PUB1遺伝子の2つの遺伝子を取得し、塩基配列を決定した。 C-CPC2遺伝子破壊株(Δc-cpc2)を作製し、野生株と生育速度の比較検討を行った結果、CYH非添加時の野生株とΔc-cpc2の生育速度は変わらないのに、CYH添加後のΔc-cpc2の生育速度は野生株と比べて遅くなり、生育の回復に時間を要することが明らかになった。また、野生株とΔc-cpc2におけるCYH添加後のCYH耐性L41リボソーム蛋白質遺伝子の発現レベルを比較した結果、Δc-cpc2は野生株よりも発現量が少ないことが明らかとなった。すなわち、Δc-cpc2細胞内のCYH耐性型リボソーム量が野生株に比べて少ないため、生育の回復に時間を要すると考えられた。また、Δc-cpc2におけるC-GCN4 mRNAレベルは野生株と比較してほとんど変わらないことから、C-Cpc2pはL41-Q mRNAとC-Gcn4pとの結合、或いはC-Gcn4pの転写活性の調節を行う調節因子であることが示唆された。また、C-GCN4 mRNAの安定性を制御する候補因子C-Pub1pとCYH誘導的耐性化機構の関係については現在、C-PUB1遺伝子破壊株を作製し、検討中である。
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