研究概要 |
時計機構は植物が昼夜の変動や季節変化に適応するために重要である。シロイヌナズナの中心振動体の分子モデルとして、Myb型転写因子CCA1、LHYとPRR(Pseudo Response Regulator)因子であるPRR1/TOC1との間で形成される正と負の転写制御フィーッドバックループが提唱されている。しかし、他のPRR因子(PRR9・PRR7・PRR5・PRR3)の単独変異も概日リズムや開花制御に影響を与えることから、これらPRR因子も時計機構に重要な働きをしているとことが示唆されている。我々は、各種二重欠損株(prr5-11/prr7-11,prr5-11/prr9-10、prr7-11/prr9-10など)を作成し、開花時期制御、胚軸伸長の光感受性、転写の概日リズムといった多面的表現型の解析を行った。その結果、どの二重変異体の解析結果からも、PRR5、PRR7、PRR9が互いに協調的あるいは相補的に機能していることが示唆された。さらに、prr9-10/prr5-11/prr7-11三重変異株において各種時計制御遺伝子の転写を解析したところ、自由継続リズムにおける著しい消失即ち、時計機能の欠損を示す強い相乗的表現型が観察された。これらの結果をもとに、我々は各PRR因子が中心振動体として機能している新しいシロイヌナズナの中心振動体の分子機構モデルを提唱した。また、PRR1の相互作用因子として我々がPILファミリーと名付けた一群のbHLH型転写因子を同定し、その一つであるPIL6が光情報伝達経路で機能していることを明らかにした。その結果、概日時計機構の出力経路と光情報伝達経路がPILファミリーの因子を介してリンクしていることが示唆された。
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