SUMOは細胞周期・染色体組換え・分配・クロマチン動態・遺伝子発現・核輸送などに関わる種々のタンパク質を翻訳後修飾することで発生・増殖・老化などに関与する。こうした多彩なSUMO修飾システムを理解するためには、シグナル伝達網におけるSUMO化基質の位置付けを明確にすることが重要である。我々は、多彩なSUMO修飾システムの全容を理解する事を最終目標として、分裂酵母をモデル生物にプロテオミクス的手法によりSUMO化基質タンパク質の同定を行なっている。その過程で、クロマチン構造制御複合体に関与する重要な因子群がSUMO化修飾を受けることを見いだした。それらの主なものは、ヒストン脱アセチル化酵素:Clr6、クロマチンリモデリングRSC複合体構成因子、FACT(Spt16-Pob3)複合体、及びヒストンメチル化転移酵素Set1複合体であった。 今回、そのうちの一つであるクロマチンリモデリングRSC複合体のSUMO化修飾について解析を進めた。真核生物の染色体DNAは、核内で高度に折り畳まれたクロマチン構造をとっているため、遺伝子発現にはクロマチンリモデリング因子やヒストン修飾などによるクロマチンリモデリングが重要である。RSCクロマチンリモデリング複合体は、ATPの加水分解を伴って染色体構造の再編を行なう生育に必須なクロマチンリモデリング因子である。我々は、分裂酵母のRSCクロマチンリモデリング複合体に含まれると予想されるRsc1及びRsc8が、in vivo及びin vitroにおいて実際にSUMO化修飾を受ける事を明らかにした。また、分裂酵母RSC複合体の精製により、実際にRsc1とRsc8が複合体形成をしている事がわかり、さらに分裂酵母RSC複合体のその他の構成因子に関する情報も得られた。
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