分子シャペロンは新生および変性タンパク質に結合し、その折れたたみ過程を制御する補助因子としてタンパク質の機能発現に重要な役割を果たしている。Hsp70ファミリータンパク質は多くの生物で高度に保存されている分子量約7万の分子シャペロンである。細菌のHsp70ファミリータンパク質であるDnaKについては、外来タンパク質と共発現させることで、封入体の形成を抑制できることが明らかにされている。しかし、適用できるタンパク質の種類は限定されており、基質特異性の異なる新たなDnaKの開発が期待されている。本研究ではDnaKがD-アミノアシラーゼの折れたたみを促進する機構を明らかにし、性質の異なるタンパク質の折れたたみ過程に適応したHsp70の構築を試みる。Alcaligenes xylosoxydans subsp.xylosoxydans A-6株のD-アミノアシラーゼはD-アミノ酸の生産に利用できる有用酵素である。本酵素をdnaK欠損株中で大量発現させると活性を持つ酵素が得られないことから、本酵素の折れたたみ過程はDnaKに依存していることが示された。一方、本酵素のアルギニン354をリジンに置換した変異型酵素R354KはDnaK非存在下でも折れたたまれることから、D-アミノアシラーゼのアルギニン354はその折れたたみを阻害すること及び、DnaKはアルギニン354に結合しその阻害を抑制することで本酵素の折れたたみを促進していることが明らかとなった。このことよりアルギニン354に効率よく結合できるDnaKを他の微生物から探索することで、従来のDnaKよりも効率よくD-アミノアシラーゼの折れたたみを促進するDnaKを見出すことができる。
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