シャペロンはタンパク質に結合しその凝集沈殿を抑制するとともにタンパク質の折れたたみを促進する。このため生理的に不活性な封入体を形成する組み換えタンパク質をシャペロンと共発現させるとその封入体形成を抑制することができる。しかしシャペロンが封入体形成を抑制するタンパク質の種類は限られている。これまでに様々な種類のシャペロンが報告されているが、それぞれのシャペロンがどの様なタンパク質の封入体形成を抑制するか考察されていない。本研究ではシャペロンの一つDnaKに注目し、DnaKが結合しその折れたたみを促進するタンパク質の特徴の解明を試みた。折れたたみのモデルタンパク質としてD-アミノ酸生産に用いられているD-アミノアシラーゼを用いた。D-アミノアシラーゼのin vivoでの折れたたみにはDnaKの存在が必須であったが、354番目のアルギニンをリジンに置換した変異型酵素R354KはDnaK非存在下でも折れたたまれた。この結果、in vivoにおいてDnaKはD-アミノアシラーゼのR354に結合しその折れたたみを促進していることが考えられた。一方、in vitroにおいて精製したD-アミノアシラーゼを尿素もしくは熱により変性した後、折れたたむ条件に戻すとDnaK非存在下でも折れたたまれた。このことからD-アミノアシラーゼの折れたたみはin vitroとin vivoで異なることが示された。この相違はin vivoにおいてタンパク質はN末端から順に合成され折りたたまれる一方、in vitroにおいて生合成が完了した一本鎖のペプチドが折れたたまれることに由来することが考えられた。このため無細胞抽出液によるin vitroタンパク質合成キットを用いてD-アミノアシラーゼの生合成を行い、その折れたたみに対するDnaKの影響を検討した。この結果、in vitroにおけるD-アミノアシラーゼの折れたたみはDnaKに影響されないことが明らかとなった。今後D-アミノアシラーゼがin vivoにおいてDnaK非存在下で折れたたまれない原因を検討する。
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