研究概要 |
イネのファイトアレキシンであるサクラネチンの生合成酵素ナリンゲニン7-O-メチルトランスフェラーゼ(NOMT)とほぼ同様の機能を持つオオムギのフラボノイド7-O-メチルトランスフェラーゼ(HVOMT)の配列を用いてイネゲノムデータベースをBLASTによって相同性検索を行った.NOMT活性はイネ葉を紫外線照射することによって顕著に増加することが知られているので,得られたHVOMTに相同性が高い遺伝子配列をもとにプライマーを設計し,紫外線照射イネ葉片から調製したcDNAをテンプレートとしてPCRによる遺伝子の増幅を試みた.コントロールとして,紫外線照射をしていないイネ葉片から調製したcDNAをテンプレートとしたPCRを同時に行った.その結果,紫外線照射によって発現が増加する遺伝子が2つ(アクセッション番号AK069308,AK069721)確認された.この2つの遺伝子の全長cDNAをクローニングし,さらに発現ベクターに導入して大腸菌によってタンパク質を生産させた.今後はこの発現タンパク質がNOMT酵素活性を示すかどうかを確認する予定である.また,紫外線照射したイネ葉には今までにはイネにおいての存在は報告されていないフラボノイド化合物であるゲンクワニン(4′,5-dihydroxy-7-methoxyflavone)が存在することも明らかにした.ゲンクワニンはサクラネチンとは違い,イネいもち病菌に対してほとんど抗菌活性を示さなかった.イネ葉から抽出した粗酵素液によってサクラネチンからゲンクワニンへの変換が触媒されることを確認した.したがって,ゲンクワニンはイネ葉におけるサクラネチンの代謝産物の一つであると推定できる.
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