研究概要 |
西洋オトギリ草は、西洋諸国において抗鬱治療に用いられているハーブである。Hypericinは西洋オトギリ草の有効成分であるが、微量成分であり、副作用をもたらす夾雑物との分離精製が困難であることから、その有効性が広く認知されているのにもかかわらず、日本では実用に至っていない。本研究課題は、放線菌Streptomyces griseusのアリールカップリングを触媒する新規酵素P-450melを用いて、Hypericinを安価大量生産することを目標としている。 P-450は、一般的に、電子伝達系としてferredoxinおよびferredoxin還元酵素を反応に必要とする。アリールカップリング能を有するP-450は、我々により同定されたばかりであり、電子伝達系補酵素の要求性等不明な点が多い。S.griseusのP-450mel遺伝子破壊実験により、P-450melは1,3,6,8-tetrahydroxynaphthalene(THN)を1,4,6,7,9,12-hexahydroxyperylene-3,10-quinone(HPQ)に変換する酵素であることが示唆された。そこで、THNを基質とし、ほうれん草由来のferredoxin、ferredoxin還元酵素を用い、P-450melのin vitroにおける反応を試みた。その結果、P-450melは2分子のTHNをHPQにカップリングし、ミトコンドリア型電子伝達系補酵素を電子伝達系として代用できることが判明した。以上のように、P-450melのin vitroにおける反応系が確立したことで、emodine anthroneからのhypericin生成反応の検討が可能となった。
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