広島県倉橋島周辺でサンプリングした繁殖盛期のホンベラの雌(約50匹)と二次雄(約20匹)から脳を採取し、-80℃にて凍結保存した。その一部の脳を用いて、界面活性剤を含まない緩衝液によるタンパク質の抽出をおこなった。これを出発材料として、QIAGEN社PhosphoProtein Purification Kitを使用して、リン酸化タンパク質をアフィニティ精製した。その一部を二次元電気泳動に供して分析をおこなったが、雌と二次雄の間で変動が見られるリン酸化タンパク質のスポットは見いだされなかった。二次元電気泳動法では、泳動像が乱れたり、再現性が悪いなどの問題に直面し、また定量的な比較が困難であったことから、これに代わる方法として、再現性と定量性に優れた二次元高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によるプロファイリングを採用することにした。はじめに、タンパク質の分離に適したHPLCカラムと溶出条件の検討をおこなった。上記のホンベラ脳の粗抽出液の一部を、種々のカラムを用いたHPLCに供して分離をおこない、それぞれのクロマトグラムを比較した。その結果、一次元分離の陰イオン交換クロマトグラフィーでは、東ソー社TSK-GEL DEAE-5PWを用いて、0-600mM NaCl/20mM Tris-HCl buffer (pH7.8)のグラジェント溶出(20 mM/min)をおこなった場合に、良い分離を得た。二次元分離の逆相系クロマトグラフィーでは、GL Science社Inertsil Phを用いて、0-60%アセトニトリル/0.1%TFAのグラジェント溶出(1%/min)をおこなった場合に、良い分離を得た。以上の結果から、二次元HPLC法には、これらのカラムと溶出条件を使用することとした。
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