研究概要 |
放線菌Streptomyces rochei 7434AN4株のもつ線状プラスミドpSLA2-Lにはランカサイジン(LC)およびランカマイシン(LM)の両ポリケチド生合成遺伝子群、さらにこれら抗生物質生産をコントロールする制御遺伝子群が存在している。そこで本年度は(1)LM生合成経路の解明,(2)制御遺伝子群の解析とその応用、に焦点を絞り研究を実施した。 (1)ポリケチド生合成の初発反応に関与するスターターユニットに関して、LMでは3-hydroxy-2-butyl基であり、イソロイシンを起源としていると思われた。そこで[3-^2H]イソロイシンを合成し、生産菌への取り込み実験を行った。その結果LMの14位に重水素が導入されることが分かった。さらに2つの水酸化酵素の遺伝子破壊を試み、代謝産物解析を行った。その結果2つのP450水酸化酵素のうち、lkmFが8位を、lkmKが15位を水酸化することが分かった。またlkmK破壊株から8,15位両方がデオキシ化されたLMを取得できたので、水酸基導入の順序は15位、8位であることが示唆された。 (2)放線菌特有のガンマブチロラクトン(GB)を鍵物質とした制御遺伝子について遺伝子破壊を試みた。その結果SrrXはGB生合成に関与していた。SrrA-CはGBのリセプターと高い相同性があったので、srrXとの二重破壊株をそれぞれ構築し、抗生物質生産を調べた。その結果srrA-srrX二重破壊株で抗生物質生産を確認でき、これによりGBのリセプタータンパクがSrrAであることが分かった。また、srrB破壊株は両抗生物質を数倍以上高生産していた。このsrrBをベースにした生合成遮断株を作製したところ、従来微量しか単離出来なかった代謝産物を十分量得ることに成功した。
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