研究概要 |
生デンプンの酵素的加水分解反応は、従来生デンプン懸濁液中での反応のモニターが困難であったため、詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。本研究では、グルコアミラーゼによる生デンプンの加水分解反応を、グルコースバイオセンサーを用いることにより追跡し、反応初速度の解析を行なった。電子伝達メディエータとしてベンゾキノンをカーボンペースト電極中に練りこみ、グルコースオキシダーゼを電極表面に固定化した電流計測型グルコースセンサーを作成し、生デンプン懸濁液中のグルコース濃度を連続的にモニターした。可溶化デンプンを基質とした場合、加水分解反応初速度はミカエリス-メンテン型の速度式にしたがうのに対し、生デンプンを基質とした場合には、反応初速度は酵素のバルク濃度に対して飽和する傾向を示す一方、基質の量に対しては比例するという、ミカエリス-メンテン型の速度式とは逆の濃度依存性が観察された。このような依存性は、ラングミュア吸着等温式を仮定して導かれる速度式により説明できた。基質を不溶性セルロース、加水分解酵素をセルラーゼとした系についても同様の反応速度の依存性が観察された(Chem. Lett.,33(2004)692)。さらに、粒径の異なる生デンプンを用い、加水分解反応初速度のデンプン表面積との関係を検討したところ、反応初速度とデンプンの比表面積との間には明瞭な比例関係が認められ、先に示した速度式からの予測と一致した。反応速度式の理論的基礎、および酵素の基質表面への吸着量の検討結果等も含め、これまでの研究結果を学術誌に投稿した(Biochim. Biophys. Acta, submitted)。また以上の成果は、国際学会(1回)、国内学会(3回)において発表した。
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