研究概要 |
デンプン粒の酵素的加水分解反応は、従来デンプン懸濁液中での反応の追跡が困難であったため、詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。本研究では、グルコアミラーゼによるトウモロコシ由来デンプン粒の加水分解反応を、電気化学バイオセンサーを用いることにより追跡し、反応初速度の解析を行なってきた。本年度は、前年度の結果をもとにより詳細な解析を行なった。粒径の異なるデンプン粒を用い、加水分解反応初速度のデンプン表面積との関係を検討したところ、反応初速度とデンプン粒の比表面積との間には明瞭な比例関係が認められた。この結果は、前年度示した酵素の基質表面への吸着を仮定して導かれる速度式により説明できた。反応速度式の理論的基礎、および酵素の基質表面への吸着量の検討結果等も含め、これまでの研究結果を学術誌(Journal of Agricultural and Food Chemistry,53(2005)8123-8127)において発表した。さらに、対象をトウモロコシ以外の各種植物由来デンプン粒に広げ、先と同様の速度論的解析を行なった。この結果、酵素のデンプン表面への吸着しやすさはデンプンの種類による違いがほとんどみられないが、吸着した酵素の活性はデンプンの種類により異なることが示された。また、セロビオヒドロラーゼによる結晶性セルロースの加水分解反応についても、電気化学バイオセンサーによる追跡法を確立し、速度論的解析を行なった結果、グルコアミラーゼによるデンプン粒の加水分解反応と同様の機構で反応が進行していることが示された。これら本年度の成果は、国際学会(1回)、国内学会(2回)において発表した。
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