研究概要 |
主な糖尿病である2型糖尿病は,遺伝的素因に加え,生活習慣に基づく環境因子が発症および進展に関与する。食事脂質や糖質の摂取過多によるエネルギー過剰は肥満を誘発し,代表的な環境素因となる。また脂質の摂取過剰は生体の酸化ストレスを亢進させやすく,このことが肥満とは独立して,糖代謝調節の不良の誘発要因となりうる。そこで本研究では,糖尿病の予防・改善に向けた食品の利用を目指して,肥満の抑制に効果的な食品の検索と生体酸化ストレスが糖代謝調節に及ぼす影響の解析の両面から検討を試みた。まず肥満抑制に有効な食品成分の検索のために,マウス3T3-L1脂肪細胞を用いて分化抑制および脂質分解促進効果についての検討を行なった。食品素材からのメタノール,エタノールおよび熱水抽出物について評価した結果,成熟脂肪細胞への分化抑制効果および細胞内の蓄積中性脂質の分解促進効果のいずれにおいても,ミカンの皮およびカリンから調製した抽出サンプルで強い効果が認められた。次に生体酸化ストレスが糖代謝調節へ及ぼす影響をみるために,インスリンシグナルの負の調節に関わるとされるSOCS遺伝子発現の変化を,生体酸化ストレスの亢進が認められるストレプトゾトシン誘導1型糖尿病ラットを用いて検討した。その結果,肝臓でのSOCS3遺伝子の有意な発現上昇とSOCS2遺伝子の上昇傾向が認められた。この変化が酸化ストレスの直接的な影響であるかを確認するために,急性酸化ストレスモデルである鉄投与ラットを用いて検討したところ,対照群に比べ,鉄投与群で有意な肝臓中SOCS3遺伝子の発現上昇を認めた。
|