昨年度までに地域特産物であるヤマブドウの抽出物に脂肪細胞の分化抑制効果を見出しているが、今年度はヤマブドウ成分の抗酸化機能に注目して検討した。マウス3T3-L1脂肪細胞に酸化ストレスを負荷することでアディポネクチン遺伝子発現に減少が見られる一方、IL-6及びPAI-1遺伝子発現に上昇が見られる。このことは肥満時の脂肪組織での炎症亢進を反映し、そのことが肥満に伴うアディポサイトカイン発現バランスの悪化に結びつくことを示す現象と考えられているが、ヤマブドウ抽出物の添加はこのアディポサイトカイン発現バランスを正常化した。また従来、2型糖尿病でのインスリン抵抗性とSOCS Familyタンパク質との関係が報告されているが、我々はSTZ誘発1型糖尿病ラットの肝臓でもSOCS3遺伝子発現上昇が起こることを見出している。しかしながらその変化とインスリン応答との関係については未検討であった。STZ誘導1型糖尿病モデルラットを用いて、ITTによるインスリン応答性とその際の肝臓SOCS3遺伝子発現とタンパク質量の変化を食餌抗酸化物質としてカテキンを与えたときの影響とをあわせて検討を行った。その結果、糖尿病で低下したインスリン応答をカテキン添加食給餌は回復した。肝臓SOCS3遺伝子発現は糖尿病により若干の上昇が見られるものの有意なほどではなく、またカテキンによる低下も傾向は見られるものやはり有意ではなかった。加えてその時のSOCS3タンパク質量の変化を検討したところ、糖尿病態では正常より低下が見られ、カテキン添加食による影響は認められなかった。従ってカテキンの添加は、STZで誘発した糖尿病時のインスリン応答を回復する効果はあるものの、その際の変化に肝臓でのSOCS3発現は関与していないと考えられた。
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