マルチプルリスクファクター疾患遺伝子として、病態発症の危険因子及び抑制因子の両方向から検索した。その結果、脂肪組織から分泌されるホルモン様物質:アディポサイトカインの一種である"アディポネクチン"が、肥満誘発性のインスリン抵抗性や高血圧の発症と改善に深く関わっていることがモデル動物を用いたin vivo実験で明らかとなった。そこで、アディポネクチンの産生に影響を及ぼしうる食事性分をスクリーニングしたところ、必須脂肪酸リノール酸の共役脂肪酸型異性体である共役リノール酸がアディポネクチン誘導体として作用することが示された。そこで肥満病態モデルラットに対する共役リノール酸摂取により病態発症の予防・改善を試みた。その結果、共役リノール酸摂取により血中のアディポネクチン濃度の顕著な上昇が認められ、病態ラットの高インスリン血症を改善できることが示された。また共役リノール酸摂取により、肝臓における脂質の蓄積、肝機能マーカー(GOT、GPT、ALP、LDH)の上昇および肝臓における炎症誘発性遺伝子(Tumor necrosis factor-alpha)の発現についても、肝臓アディポネクチン濃度の上昇を伴って改善できることが示された。またヒトの疫学調査により血中アディポネクチン濃度の低下は、本態性高血圧発症の危険因子であることが示唆されているため、自然発症成功血圧ラットに共役リノール酸を摂取させることで、病態発症の予防画家のであるか検討した。その結果、共役リノール酸摂取した高血圧ラットでは、4週間飼育後の血圧の上昇が有意に抑制され、その作用機序として脂肪組織におけるアディポネクチンmRNAの上昇に伴う、血中アディポネクチン濃度の上昇が関与していることが示された。 よって本研究により、マルチプルリスクファクター疾患遺伝子の一つとしてアディポネクチンが挙げられ、その発現制御を食環境によって行えることが示された。
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