本研究課題では主にisoliquiritigeninについて、炎症関連因子や細胞死誘導活性の詳細を検討し、あわせて類縁化合物の活性について明らかにすることを目的とする。これに関し、本年度は以下の点を明らかにした。 1.計7種の細胞について細胞死(アポトーシス)誘導活性の感受性について精査し、すべてに用量依存的な増殖抑制効果が観察され、その感受性は大腸がん由来細胞株で若干高いことが示された。 2.本化合物はマクロファージ様細胞におけるリボ多糖(LPS)処理により誘導されるCyclooxygellase-2(COX-2)、Inducible Nitric Oxide Synthase (iNOS)発現を後転写もしくはタンパクレベルで抑制し、産物であるProstaglandin E_2 (PGE_2)及び一酸化窒素産生を有意に抑制した。 3.本化合物によるアポトーシス誘導活性に対するCOX-2発現抑制効果の寄与を検討するため、マウス大腸がん細胞株Colon 26を限外希釈による単細胞培養法にてクローニングを行い、Western Blot法にてスクリーニングし、COX-2高発現株Co26-18を得た。 4.Colon 26とCo26-18を用いて、本化合物によるアポトーシスに対する感受性を比較検討し、Co26-18は親株に比しアポトーシス誘発に抵抗性を示す事が明らかになった。更に、このアポトーシスはLipoxygenase阻害剤前処理で亢進され、同時にPGE_2、PGI_2、TXB_2で処理するとその亢進は阻害された。これより、本化合物によるアポトーシスは、COX-2を中心としたアラキドン酸代謝経路と密接な関連がある事が示された。 5.isoliquiritigenin誘発アポトーシスに最も寄与しているカスケードを決定するために、ヒト大腸癌及び子宮頚癌細胞株COLO-320DM、HeLaを用い、活性化カスパーゼを検出したところ、カスパーゼ9、6が共通して活性化されており、HeLaではカスパーゼ3、7も活性化されていた。また、COLO-320DMではAIF、HeLaではチトクロームcの漏出が認められ、漏出した分子と細胞間の基底発現レベルに相関が見られた。
|