研究概要 |
生活環境の中で食事が健康に果たしている役割はかなり大きいものと考えられる.ファーストフードやインスタント食品などによって,日本独特の『米』文化が衰退してきている.統計によれば日本国民一人あたりの米の消費量は年々減り,今や一俵にも満たない.そこで毎日の食事の有用性を見出すために,日本人の主食であるご飯に着目し科学的に解析したいと考えた.平成16年度は一定期間米を含む餌を食べたマウスと,米を含まない餌を食べたマウスの行動変化を観察し比較することによって米の学習記憶機能に与える影響について検討した. ICR系雄マウス(5週齢)を用いて,実験を行った.まず,3グループに分けて飼育した.標準飼料(オリエンタル酵母工業社製,AIN-93G)群,『白米』混合飼料群,『発芽玄米』混合飼料群に分けて約1ヶ月間飼育した.そして給餌開始15日目より一日3回7日間の水迷路試験を行い特に空間学習能力に及ぼす影響について検討したところ,白米混合飼料や発芽玄米混合飼料を与えたマウスは標準飼料群よりも早くゴールにたどり着くようになった.このことから,白米混合飼料群や発芽玄米混合飼料群は標準飼料群よりも学習能力が優れていることを示していると考えられる.また給餌開始22日目にアルツハイマー型認知症の原因蛋白とされているβアミロイド蛋白(3nmol/3μL/mouse)をマウスの側脳室内に注入した.βアミロイド蛋白注入の7日後にY字型迷路試験により学習記憶障害の程度について評価した.その結果,標準飼料摂取群では自発的交替行動率が低下し短期記憶障害が観察された.また白米混合飼料摂取群でも同様な短期記憶障害が観察された.しかし,発芽玄米混合飼料摂取群では自発的交替行動率の低下は観察されなかったことから,β-アミロイド蛋白注入によるアルツハイマー型認知症になりにくくなっていることがわかった.
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