研究概要 |
ファーストフードやインスタント食品などによって,日本独特の食文化が衰退しており、ご飯や大豆を中心とした食生活の重要性が見直されている。平成16年度は2週間米を含む餌を食べたマウスと,米を含まない餌を食べたマウスの行動変化を観察したところ、市販のコーンスターチ入り飼料(コントロール)と比べて白米入り飼料や発芽玄米入り飼料を与えたマウスは水迷路試験で観察される空間学習能力が有意に高かった。そこで平成17年度はその神経調節機構について検討した。白米入り飼料や発芽玄米入り飼料を与えたマウスで見られた水迷路試験での学習能力の亢進作用はGABA(A)受容体拮抗薬ではなくNMDA受容体拮抗薬によってコントロールレベルまで抑制された。また、海馬におけるcalmodulin kinase II alpha(CaMKIIalpha)のリン酸化が有意に亢進していた。これらのことから米入り飼料の学習亢進作用の一部には海馬NMDA受容体/CaMKIIalphaを介する経路があることが示された。 また、同様にICR系雄マウス(5週齢)を用い30日間の給餌後情動性に及ぼす影響について行動薬理学的に検討した。学習性無力および強制水泳の両試験において、コントロールと比較して白米入り飼料や発芽玄米入り飼料を与えたマウスにおいて抗うつ様作用が観察された。また行動実験終了後のマウス前頭皮質のセロトニン含量をHPLC法で測定したところ、コントロールと比較して白米入り飼料や発芽玄米入り飼料を与えたマウスにおいて有意に大きかった。したがって白米入り飼料や発芽玄米入り飼料は前頭皮質においてセロトニンの合成を高めることによって抗うつ様作用を示している可能性があることが明らかになった。
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