各種脂肪組織(睾丸および腎臓周辺白色脂肪組織と肩胛骨間褐色脂肪組織)中の脂肪酸組成を解析し、飽和脂肪酸の一価不飽和化を触媒するステアロイルCoA不飽和化酵素(SCD)アイソザイム遺伝子発現量変化との関連を調べた。ラットに低脂肪食(サフラワー油2%)もしくは高脂肪食(パーム油20%、サフラワー油20%または魚油20%)を与えて21日間飼育し、各脂肪組織の飽和脂肪酸量(パルミチン酸+ステアリン酸)と一価不飽和脂肪酸量(パルミトオレイン酸+オレイン酸)を定量し、一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比(=MUFA/SFA)によりSCD活性を評価した。その結果、20%のサフラワー油および魚油食摂取群では、摂取脂肪中のMUFA/SFAに比べ各脂肪組織での比率は低値を示した(前群で摂取脂肪での比率が1.4に対し組織中では0.6〜1.1、後群でそれぞれ1.6および0.9〜1.1)。一方、20%パーム油食摂取群では、摂取脂肪中のMUFA/SFAに比べ組織中の比は高値を示した(それぞれ0.8および1.2〜1.4)していた。このような変化は昨年度解析したSCDアイソザイム遺伝子の中でSCD1遺伝子の変動と平行し、脂肪組織ではSCD1が飽和脂肪酸の一価不飽和化に主要な役割を果たしていることを示唆している。またマウス脂肪前駆細胞を用いて、脂肪細胞への分化過程におけるマウスSCDアイソザイムSCD1、2、3および4の遺伝子発現量変化を調べた。マウス脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化の過程で、分化誘導後10時間目において、SCD1とSCD2発現量の一過的な減少が見られた。この現象は既知の脂肪細胞分化マーカーである脂肪組織型脂肪酸結合タンパク質(ALBP)には観察されず、SCD特有のものと考えられる。設計したPCR条件ではSCD3とSCD4の発現量はバックグラウンドレベルであった。
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