研究概要 |
森林と他の土地利用の境界は,土地への社会的・経済的要求を背景として絶えず変動してきた。人間活動が森林へ強いインパクトを持ち劣化のスピードが高まる局面は,農村経済構造の変化とそれに伴う土地利用の変化が観察し易く,研究も盛んに行われたが,逆に伐境後退=森林回復の局面においては,関心の対象は土地利用そのものよりも村落の定住条件全体に関わるものに集中しがちである。 北海道において伐境が絶えず拡大局面にあった1950年代,戦後の緊急開拓により開墾された劣等地は、地代曲線の最底辺に位置づけられ、特に1990年代以降急激に放棄され、社会的に空白な地域として広がりつつある。このような土地は,里地保全活動や自然再生事業の舞台として戦略的に利用される一方で,真っ先に不法投棄や処分場建設などマイナスの利用に供される危険性もはらむ。調査地(稲作限界地)では、稲作(水田)→畜産(草地)→放棄(再森林化)という現象を観察でき、その一連の流れが昭和一桁世代のリタイアによって、決定付けられようとしている。
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