1)里地空間の定量把握および利用放棄メカニズムの解明 再森林化のフロンティア(農地と森林とのインターフェース)上に、里地がいかに存在するかを把握するために、道レベルで作られた100年前と現在のラフな地理情報から里地空間の大雑把な定量化を試みた。土地利用の履歴および利用放棄に至る社会的・経済的・制度的要因を解明するために、市町村レベルでの森林開発史、農林業生産構造の変遷、集落レベル、個別農家レベルでの経営戦略との関連を明らかにした。約100年前に初期入植が始められ、約50年前に戦後入植による傾斜耕地の開拓が行われた稲作北限地帯である北海道下川町を事例地とし、町内10集落のうち、過去100年間に最も土地利用の変化が激しかったA集落で、土地所有者へのインタビュー調査を実施した。土地利用の転換を決定した経営上の要因は、(1)昭和45年の米作減反政策による休耕奨励金の過多、(2)入植の時期(保有する土地条件の差)、(3)酪農牛の繁殖力(2世代目に生まれた雌牛の数)であることが示唆された。 2)土地保全の最適管理手法を構築する上で関係部局が直面する課題の解明 (1)開田→s45減反を経て賃貸借(草地・山林へ)→農業者年金受給時に所有権移転、というプロセスで土地が集積。昭和45年に土地利用が激変化し、平成10年代に所有が激変。(2)昭和一ケタ世代のリタイアに際し、農地・林地間の利用変動は収束し、一気に放棄相へ。土地は過剰で、農協(土地保有合理化事業)や森林組合(林地流動化事業)による土地保全のための斡旋事業が取り組まれている。(3)平地草地を集積したグループは、畜産経営の外延的拡大として同時に飼養頭数も増やし、山林を集積したグループは、草地と山林との利用転換を繰り返し、経営の大きな転機を迎えている。農業部門と林業部門とで同時期に始められた交付金制度は、これらの土地保全のための諸課題に対して役割を期待されている。
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