研究概要 |
本研究では16〜18年度にかけて,岩手大学滝沢演習林の31種の広葉樹人工林37林分を対象に,18年間の林分構造と林分材積成長量の変化特性を明らかにすることを目的とする。17年度の研究実績は以下の通りである。 1.6〜8月,広葉樹人工林37林分内に2m幅の帯状調査区を設置し,樹高1.3m以上胸高直径3cm未満の侵入木を対象に樹種名・樹高を記録した。各帯状調査区内に1m^2のコドラートを3箇所設置し,その中のササの種名・稈高を記録した。 2.全コドラートで着葉期(8月)と落葉期(11月)のササ群落表面の光量,土壌含水率,A_0層とA層の厚さを計測した。 3.広葉樹人工林の造成事例および植生データの多変量解析に関する資料収集のため,10月東京千代田区,1月東京千代田区に出張した。 4.調査の結果は以下の通りである。上層木・光量・土壌と,低木・ササの変数間での相関分析より,上層木の発達に伴い低木の樹高は低くなる傾向が認められた。このことから,林冠構成種に関係なく低木の生長は上層木の生長度合と負の関係にあると考えられる。ササについては,上層木が生長するとササの生長は被圧され,光量が増加するとササの生長も良くなった。また,上層木,光量,ササの変数を用いてパス解析を行った結果,上層木の本数密度がササ上空の光量に影響を与え,さらにその結果ササの地上部現存量に影響を与えていることが分かった。林縁部における低木とササの変数を比較した結果,低木の本数密度と樹種数は,林道側より天然林側において多く,ササの平均稈高や地上部現存量は,林道側より天然林側において少なかった。落葉性広葉樹であっても,隣接して森林のない人工林であれば,多数の樹木の侵入は期待できず,樹木種の多様性が高まらない可能性がある。
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