研究概要 |
本研究では,土壌物理学的手法,水文学的手法,地球物理学的手法,地球化学的手法を組み合わせた実験・観測により,風化基岩層内の雨水流動過程を解明することを目的としている。さらに,その結果を基に,森林小流域で実際に起きている水循環過程をより正確に表現できる新たな物理水文モデルを構築することを目指している。本年度の研究では,まず,観測を行う森林小流域を,大津市桐生試験地内(以下,K流域)と神戸市六甲試験地内(R流域)に設定した。共に風化花崗岩を母材とし,K流域は長さ30mの斜面を含む0.1ha,R流域は2haである。斜面部の土層と風化基岩層にテンシオメータと水分計を高密度で設置し,基岩層内の浸透水の物理的挙動や土層-基岩層の相互作用に関するデータ取得を開始した。これまでのところ,降雨の度に,基岩層内に飽和・不飽和浸透流が頻繁に発生することを示すデータが得られている。さらに,ダイアモンドコアドリルによる穿孔で岩石のサンプリングを行い,pF試験,飽和・不飽和透水試験を実施した。その結果,風化基岩層内では,ダルシー則に従う流れが生じ,飽和透水係数は9.5×10^<-5>cm/s〜1.2×10^<-4>cm/sの範囲にあることが示された。風化基岩とマサ土からなる森林土壌の水分特性を比較したところ,飽和体積含水率および飽和透水係数はともに土壌のほうが大きいが,湿潤領域(圧力水頭-50cm以上)で土壌の体積含水率および透水係数が急激に低下するために,乾燥領域(圧力水頭-50cm以下)では基岩の体積含水率は土壌より大きく,透水係数は土壌とほぼ同じであることがわかった。以上の結果は,土壌のほうが大間隙を多く含むのに対し小間隙は基岩のほうに多く含まれていることを示している。
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