研究概要 |
本研究では,土壌物理学的手法,水文学的手法,地球物理学的手法,地球化学的手法を組み合わせた実験・観測により,風化基岩層内の雨水流動過程を解明することを目的とした。風化花崗岩を母材とする山地小流域(面積240m^2)において,土層と基岩層の圧力水頭を詳細に計測し,土壌-基岩系における浸透水の挙動を検討すると共に,降雨流出に及ぼす土層と基岩層の影響について考察を加えた。降雨時の小流域からの総流出量は常に総雨量の5%以下であり,多量の雨水が基岩層に浸透することがわかった。基岩層内の圧力水頭変化は基岩直上の圧力水頭の変化と良く似たものとなり,土層が厚い斜面部位の基岩層内では不飽和浸透流が卓越していた。これは,浸潤前線が土層内を下降する過程で浸透強度が弱められるために土層と基岩の境界に飽和側方流が形成されないためであり,この様な部位では浸透水が流出に寄与しないことが示された。さらに,基岩内の水移動プロセスを解明するため,コイル型TDR式水分計を作製して風化花崗基岩層内に埋設し,含水率の計測を行った。基岩の含水率は年間を通じて比較的安定していたが,降雨時には小さな雨量でも上昇した。その上昇幅は土層のそれに匹敵したものの,降雨終了後には急激に低下した。貯留量でも同様の傾向が見られた。以上から,基岩の含水率変動には割れ目の寄与が考えられた。今まで簡易貫入試験により「基岩」と定義され,不透水とされた層にも雨水が浸透していることが本研究により明らかになった。
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