環境ストレスによる樹木枯死の主な要因として光合成の光阻害がある。光合成活性の失活の度合いは炭酸固定速度などにより求められてきたが、近年、より簡便で高感度な方法としてクロロフィル蛍光測定法が用いられ、様々な分野で応用されている。しかし、葉内の代謝変化に基づいた阻害定量は不十分であり、ストレスによる阻害の迅速な定量やストレス耐性能力の評価の指標基準は明確にされていない。特に、野外においては同時期に多種多様な複数の環境ストレスを受けることから、塩や水欠乏などの単一ストレスによる負荷実験結果と必ずしも一致しなかった。また、樹種間でのストレス感受性の違いがどのような因子により決定されているのかも明らかではなく、樹木に対するストレス生理学的な基礎的な情報が不足している。まずは、葉緑体で発生する過剰な還元エネルギーを散逸する過程としてミトコンドリアに注目した。ミトコンドリアの呼吸活性は酸素吸収により測定されていたが、光照射下での葉片からは葉緑体で行われる光合成により酸素が発生することから、光照射下では呼吸活性を定常的に測定することができなかった。このことから、葉緑体の電子伝達鎖の主成分であるプラストキノンおよびミトコンドリアの電子伝達鎖のユビキノンのredoxを同時に測定することで、オルガネラの電子消費(還元力散逸)共調作用を調べるために、HPLCを用いてプラストキノン、ユビキノンredox同時測定系を確立した。
|